配偶者居住権の成立要件と特徴

  • 2020年12月3日
  • 2021年7月25日
  • 相続
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配偶者居住権とは

配偶者居住権とは相続開始時(被相続人が亡くなったとき)相続人である配偶者がこれまで暮らしてきた被相続人名義の自宅に終身又は一定期間無償で住むことができる権利です。

配偶者居住権の成立要件

配偶者が相続開始時点で被相続人の所有している建物に居住していて※

かつ次のいずれかに該当すること

①相続人全員による遺産分割協議等によって配偶者居住権を取得するものとされたとき

②家庭裁判所の審判によって配偶者が配偶者居住権を取得するものとされたとき

③遺言によって配偶者居住権を遺贈されていたとき

④配偶者居住権を取得する死因贈与契約がある場合

 

※ただし、被相続人が相続開始時に建物を生存配偶者以外の方と共有していた場合にには配偶者居住権は成立しません。

配偶者居住権の特徴

配偶者居住権の存続期間

配偶者居住権の存続期間は原則、配偶者が死亡するまでの終身ですが、遺産分割の協議、遺言、遺産分割の審判で期間を定めた場合にはその定めた期間になります。

配偶者居住権と登記

配偶者居住権は登記をすることができます。

居住建物所有者は配偶者居住権を取得した配偶者に対し、登記の義務を負います。

配偶者居住権は登記が効力要件ではなく第三者対抗要件になっています。

これは登記が効力要件ではないので、配偶者居住権の登記をしていないからといって配偶者以外の相続人は配偶者に対し、被相続人の所有していた建物から追い出すことはできません。

しかし登記が対抗要件なので、配偶者居住権の登記をしていない配偶者は配偶者居住権の存在を知らない善意の第三者には対抗することはできません。

つまり配偶者が居住している建物を配偶者居住権の存在を知らない第三者に売却された場合には配偶者居住権の登記をしていない以上、第三社に対抗することはできず、出て行けと言われたら住み続けることはできなくなります。

なので配偶者居住権は登記をした方が良いですね。

配偶者居住権の譲渡や増改築や賃貸等

配偶者居住権は譲渡をすることはできず、建物所有者の承諾を得なければ居住建物の改築や増築をしたり、賃貸等により第三者に使用させることはできません。

配偶者居住権の通常の必要費

配偶者居住権は無償ですが、固定資産税などの居住建物の通常の必要費は配偶者が負担します。

配偶者居住権でどう変わるか?

例として自宅を所有していた夫が亡くなり、夫と一緒に住んでいた妻と子が相続人でなくなった夫の相続財産が自宅3,000万円と預貯金2,000万円という仮定で説明します。

配偶者居住権を設定しない場合

妻と子が相続人の場合、法定相続分は妻2分の1、子2分の1になります。

子が法定相続分通りの相続分を主張した場合、妻が自宅に住み続けるには子に500万円払わなければならないので、妻に預貯金がない場合には自宅を売却しないといけません。

配偶者居住権を設定した場合

配偶者居住権を設定すると自宅は居住権(住んだり使用したりできる権利)と居住権の負担が付いた負担付所有権の2つに分けることができます。

仮に自宅の価値が、配偶者居住権の価値1,500万円と負担付所有権の価値1,500万円だった場合、妻は配偶者居住権1,500万円と預貯金1,000万円を取得可能となります。

このように配偶者居住権を設定した場合には設定しない場合と比べて妻が取得する財産は1,500万円増えることになるので、長年住みなれた自宅に住み続けることができ、さらに預貯金も取得できるので安心して老後の生活をおくれます。