法務局に保管した自筆証書遺言と公正証書遺言の比較と優越

法務局に保管した自筆証書遺言と公正証書遺言の比較と優越

平成30年に民法の相続法が改正され、「法務局への自筆証書遺言保管制度」という制度ができました。

改正された「法務局への自筆証書遺言保管制度」を使った場合の自筆証書遺言と公正証書遺言について比較していきたいと思います。

改正前の自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

自筆証書遺言のメリットとデメリット

自筆証書遺言のメリット
・自分一人で作成できます

・費用がほとんどかかりません

・遺言の内容が他の人にばれにくい

・証人が不要です

 

自筆証書遺言の一般的なデメリット
・自分一人で作成した場合要件を満たさず無効になってしまう可能性があります

・意思能力の問題で無効になってしまう可能性があります

・遺言書を相続人等に見つけてもらえない可能性があります

・生前に遺言書を発見されてしまう可能性があります

・遺言書の内容が変造や偽造されたりする可能性があります

・検認手続きが必要です

公正証書遺言のメリットとデメリット

公正証書遺言の一般的なメリット
・公証人が遺言書を作成するので無効になる可能性が低いです

・遺言書の原本が公証役場に保管されるので変造や偽造されません

・遺言者が120歳になるまで再発行することができます

・検認手続きが不要です

・遺言者の死後に相続人等が遺言の検索をできる

 

公正証書遺言の一般的なデメリット
・費用がけっこうかかります

・証人が二人必要です

・証人から遺言書の内容が漏れる場合があります

改正前の従来の自筆証書遺言 VS 公正証書遺言

自筆証書遺言公正証書遺言
作成の手軽さ
作成費用
遺言の内容が漏れるリスク
遺言書の紛失や発見されないリスク
遺言書が変造・偽造されるリスク
検認手続き
遺言者の死後に遺言書の検索

法務局に保管した自筆証書遺言 VS 公正証書遺言

自筆証書遺言の法務局への保管制度

従来の自筆証書遺言は作成後、大切に保管していても死亡後に相続人等に発見されないリスクや第三者に変造・偽造されるリスクがありましたが法務局への自筆証書遺言の保管の制度を使用することにより、これらのリスクがなくなりました。

また自筆証書遺言は検認手続きをしなければならないですが、法務局への自筆証書遺言の保管の制度を使用することにより検認手続きについても不要となりました。

法務局への保管制度を使用した自筆証書遺言と従来の自筆証書遺言との比較

従来の自筆証書遺言保管した自筆証書遺言
遺言書の紛失するリスク
遺言書が発見されないリスク  〇(注)
遺言書が変造・偽造されるリスク
検認手続き
遺言者の死後に遺言書の検索

(注)法務局に自筆証書遺言を保管し、かつ自筆証書遺言の保管の申請書に記載した場合に限り、遺言者の死亡後に法務局から通知されます。

法務局への保管制度を使用した自筆証書遺言と公正証書遺言との比較

法務局に保管した自筆証書遺言公正証書遺言
作成の手軽さ
作成費用
遺言の内容が漏れるリスク
遺言書の紛失するリスク
遺言書が発見されないリスク
遺言書が変造・偽造されるリスク
検認手続き
遺言者の死後に遺言書の検索

法務局への保管制度を使用した自筆証書遺言と公正証書遺言との優越

上記だけを比べると法務局への保管制度を使用した自筆証書遺言は公正証書遺言よりも優れているように見えますが、自筆証書遺言は財産の目録以外は自書しなければならないので、手が不自由で字を書くことが難しい方は自筆証書遺言を作成することは難しいと思います。

また自筆証書遺言を法務局へ保管するには、遺言者本人が法務局に来庁しなければいけないので、足が不自由で歩けない方や思い病気の方にはハードルが高いかもしれません。

この点、公正証書遺言は公証人が遺言書を作成するので、手が不自由で自書するのが難しくても遺言書を作成できますし、有料ですが交通費を支払って公証人に自宅や病院に来てもらうこともできるので、足が不自由な方でも問題なく遺言書を作成することができます。

従って法務局への保管制度を使用した自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらが優れているわけではなく遺言者の状況によって選択すべきだと私は思います。