少額訴訟とは?
少額訴訟とは請求の目的の価額(訴額)が60万円以下の金銭の支払い請求を簡易裁判所に訴えを提起する場合に利用できる手続きです。
原則1回の期日で審理が終了し、即日判決が言い渡されます。
少額訴訟の要件
訴額が60万円以下であること
少額訴訟は請求の目的の価額(訴額)が60万円以下に限って利用できます。
※訴額には利息や違約金は含みません。
(例)元本60万、利息10万円の貸金返還請求は少額訴訟を利用できます。
金銭の給付を求める訴えであること
少額訴訟は金銭の支払いを求める訴えに限り利用できます。
従って請求の目的の価額(訴額)が60万円以下であっても土地や建物の不動産の明け渡しを求める訴えや登記手続きを求める訴えなど金銭の支払いを求める請求以外は不可です。
また少額訴訟は給付を求める訴えに限り利用できますので、確認の訴えや形成の訴えなどに少額訴訟は利用することはできません。
少額訴訟の利用回数に違反していないこと
少額訴訟は同一原告が同一の簡易裁判所で1年間(毎年1月1日から12月31日まで)に10回までしか利用できません
※1年に10回の利用回数は少額訴訟による裁判を求めた回数によってカウントしますので、少額訴訟提起後取り下げた場合や少額訴訟提起したが通常訴訟に移行した場合も1回としてカウントされます。
反訴の禁止
少額訴訟においては反訴を提起することはできません。
反訴の提起を認めると訴訟が複雑になるので原則、一期日で審理の終了する少額訴訟にはなじまないからです。
一期日審理の原則
少額訴訟は特別の事情がない限り、1回の期日で審理を終える手続きです。
「参考条文」少額訴訟においては特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論において審理を完了しなければならない(民事訴訟法370条1項)と定められています。
証拠調べの制限
少額訴訟は指定された期日にその場ですぐに調べることができる証拠に限り調べることができます。
具体的には
・出頭している当事者本人(当事者本人尋問)
・在廷している証人(承認尋問)
・期日に持参している書類(書証)
「参考条文」証拠調べは即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。(民事訴訟法371条)と定められています。
証人等の尋問
(1)証人の宣誓不要
通常の裁判では証人の宣誓は必要的ですが、少額訴訟では宣誓をさせないですることができます。
(2)証人尋問や当事者尋問の宣誓
通常の裁判では順番が決まっていますが(主尋問→反対尋問→補充尋問)少額訴訟では裁判官が相当と認める順序ですることができます。
少額訴訟判決の特徴
即日判決言い渡し
少額訴訟での判決は原則として審理終了後、直ちに言い渡されます。
調書判決(判決原本に基づかない言い渡し)
少額訴訟の判決の言い渡しは審理終了後直ちにすることを原則としていますので判決の原本に基づかないでされます。
判決による支払いの猶予等
少額訴訟は原告の請求を認める判決をする場合、必要があると判断した場合判決の言い渡しの日から3年以内の範囲で支払期限を猶予したり、分割払いを認めたり、遅延損害金を免除したりすることができます。
①3年を超えない範囲で支払期限を定めること
②3年を超えない範囲分割払いを定めること
③①②の期限の猶予をと併せて遅延損害金を免除
必要的仮執行宣言
少額訴訟で勝訴した原告は、判決の確定を待たずに債務名義を取得できます。
単純執行文の不要
少額訴訟の確定判決による強制執行につては執行文は不要です。
承継執行文は必要です。
通常訴訟への移行
被告の申述による通常訴訟への移行
少額訴訟は相手方(被告)から通常の手続きでの審理を求める申し出があった場合は通常訴訟へ移行します。
相手方(被告)の申述による通常の訴訟への移行は相手方(被告)が最初の口頭弁論期日において弁論したり、期日が終了してしまった場合は移行の申述はできなくなります。
裁判所の職権による通常訴訟への移行
裁判所による職権で通常訴訟へ移行することもあります。
裁判所の職権により、通常訴訟の移行されるのは次に場合です。
①60万円を超える請求や1年回に10回を超える少額訴訟の申立てをした場合
②回数の届けをしなかった場合
③被告が行方不明の場合(住所が不明な場合)
④少額訴訟によって裁判することが相当でない場合
「参考条文」裁判所の職権による通常訴訟への移行決定については不服を申し立てることはできません。(民事訴訟法373条4項)
判決に対する不服の申立て
通常の訴訟であれば簡易裁判所での第一審判決に不服がある場合は地方裁判所への控訴をすることができます。
しかし少額訴訟の判決に対して不服がある場合は控訴はできません。
ただし、少額訴訟の判決をした簡易裁判所に異議の申し立てができます
異議申し立ての後に言い渡される判決については原則として不服を申し立てることはできません。
少額訴訟の手続きの流れ
紛争の発生 |
↓
原告(訴える人) | 裁判所 | 被告(訴えられる人) |
1訴状・証拠書類を裁判所へ → | 訴状の受理↓ | |
期日の連絡を受ける 手続き説明書面の受領 | ←第1回期日の指定→ | 訴状、期日呼出状手続き説明書面などを受領↓ |
答弁書の受領↓ | ←答弁書の受理 | ←答弁書、証拠書類提出↓ |
追加の証拠書類、証人の準備 | 証人 | 追加の証拠書類、証人の準備 |
審理は原則1回で終了↓ | ||
判決又は和解 |
原告が訴状・証拠書類等を裁判所に提出
被告の住所地を管轄する簡易裁判所へ次の物を提出します。
①訴状
②証拠
③当事者に法人が含まれる場合は登記事項証明書(法務局で手に入ります)
期日の連絡・手続き説明書面を受領
裁判所から期日の連絡がきます。
答弁書の受理
被告から答弁書を受け取ります。
少額訴訟の審理
少額訴訟では当事者や裁判官がテーブルを囲んで審理を行います。
判決
審理は原則1回で終了。
審理終了後、判決が行われます。
少額訴訟にかかる費用
収入印紙
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 1,000円 |
20万円まで | 2,000円 |
30万円まで | 3,000円 |
40万円まで | 4,000円 |
50万円まで | 5,000円 |
予納郵券代
被告一人の場合は5,300円ぐらいです。
被告が一人増えるごとに2,800円ぐらいです。